大阪のつまようじメーカー「菊水産業 @kikusui_sangyo」に学ぶTwitter活用

Twitterビジネス
アイデアのヒント
中小企業向け活用事例: 菊水産業のインタビュー

ビジネスのご紹介

- 貴社のビジネスについて教えてください

大阪府河内長野市で1960年に創業したつまようじメーカーです。曾祖父が創業し、私は4代目となります。

つまようじは元々河内長野市の地場産業でしたが、いまでは衰退産業となり、ほとんどが国内製造をやめてしまいました。市場に出回っているつまようじのほとんどが、今や中国を中心とする海外からの輸入品ですが、弊社は今でも北海道産白樺材を使って自社で製造しています。溝があるタイプのつまようじを国産で作っているのは全国で2社しか残っておらず、地場では弊社のみです。

国産白樺ようじ(溝があるつまようじ)と並んで看板商品なのが、和菓子を頂く際に使用する黒い皮つきのナイフのような「黒文字ようじ」です。これを国産で製造する業者も、平成元年頃から安価な中国産が入ってくるようになって、ほぼ撤退しました。弊社は3年前から国産化に向けて材料探しの為に山探しから始め、復活させました。

つまようじ職人だった祖父の時代には、黒文字ようじ製造機械の開発もしたのですが、これも海外に技術を持っていかれてしまいました。そして現在工場で動いている国産白樺ようじを作る機械も、50年くらい前から使っているものをメンテナンスしながら大事に使っています。壊れてしまったら修理はできないし、新しく作るにはオーダーメイド、もしくは中国の機械を買うほうが安いという状況です。

日本のものづくりはどこも似たような状況だと思いますが、国産黒文字ようじは削る最後の工程は今でもすべて手作業で行っています。

- 製造作業はすべて自社内で行っているのですか

従業員は6名ですが、袋詰めや梱包などをしてくださる内職さんが地域に30〜40人いらっしゃいます。社員が毎日資材を渡し、作業が終わったものを回収しに行くという感じです。内職さんは地域の高齢者の方が中心なので、一人暮らしの高齢者のお宅に伺うと、作業済みのものを受け取るだけでなく、お話をしたり、ちょっとした用事を手伝ったりもしています。たまに畑でできた農作物などをたくさんいただいて帰ってきたりもして、こういった地域の交流はうれしいし、人との関わりがとても温かいなぁと思っています。

- 販売促進、マーケティングの取り組みはどのようなものですか

創業からメインで行っているBtoBは、卸問屋さんに飲食店向け商品を卸したり、和菓子屋さん向けに袋に名入れをした黒文字ようじや小型ナイフを納めたり、あとは職人さんに制作してもらった国産品のキッチンツールなどの百貨店さんへの卸しが中心です。

私が会社の跡継ぎとして入るまでは、一般消費者向けの商品も、自社商品もほとんどなく、ブランドロゴもありませんでした。BtoBがメインの商流でしたので「菊水産業」という名前が表に出ることもほぼありませんでしたが、4年前から一部の商品を一般消費者向けにEC販売を始めました。「日本製のいいものを使いたい」というお客様にご愛用いただいています。

菊水産業のTwitter活用

- Twitterをやる理由、始めたきっかけは何ですか

地場産業のことを知ってもらいたい、日本のものづくりの発信をしたいという気持ちと、あとは基本的におもしろいからやっています。

アカウントは2016年に作っていたのですが、ツイートはあまりしておらずInstagramと連動してるくらいで実は2019年までは完全に放置していました。

コロナ禍になり最初の緊急事態宣言が出された2019年4月末、「つまようじ屋の非接触棒」という商品を発売したときが「Twitterちゃんとやろう」と思ったきっかけです。

弊社の国産白樺ようじは6cmで製造しているのですが、北海道の協力工場で白樺の丸太を30cmの細い丸軸棒に加工したものを大阪に送ってもらっています。それを5等分(1本6㎝)にカットし先を鋭く削って制作します。

コロナ禍で世の中が非接触に注目し始めた時、ちょうどニュースで中国の方がエレベータのボタンをつまようじで押してるのをたまたま見て「これや」と思いました。材料(30cmの丸軸棒)の段階で使えなくなってしまうものが中にはありますが、貴重な国産材を廃棄することなく再利用することを思い付き、「つまようじ屋の非接触棒」が爆誕したというわけです。かなり話題になりメディアにもたくさん取り上げていただき、商品もたくさん売れました。


発売時に商品のプレスリリースを配信したのですが、その記事が拡散され、いろんな人から「めっちゃシェアされてんで」と言われ、どうやらTwitterで話題になっているらしいということを知りました。当時は全くTwitterを使っていなかったので気づきませんでしたが、もしかしてTwitterはかなり可能性があるSNSツールなのではないか?ちゃんとやったほうがいいのでは、と思い、2019年の7月からツイートを本格的に始めました。

 

 
- ところでつまようじの溝って、折ってまくらにするためというのは本当ですか

それ、「つまようじ屋です」と言うとたいてい聞かれる質問なのですが、あれはただの飾りです。

今はちゃんとした刃物がありますが、昔は砥石でつまようじの材料をカットしていたそうです。材料が木なので、カット断面が毛羽立ってできてしまうささくれを取るために、摩擦で焦がしており、そのためてっぺんが黒くなっています。

最初は溝がなく、てっぺんが黒いだけのつまようじでしたが、汚れにみえるのではという話になり、黒い部分をこけし人形の頭に見立てて溝を作ったのが始まりです。当時は業者がたくさんいたので、溝を見れば「これは〇〇のつまようじやな」と溝のデザインで業者がわかったらしいと聞いています。

Twitterで #いいにくいことをいう日 がトレンドになっていたとき、この話をツイートしたら結構反応がありました。

 
- Twitterの中の人はどんな方ですか

2020年8月末から会社の代表取締役をやっていて、Twitter上ではお菊さんと呼ばれています。

性格的にすぐ失敗したり、よく食べ物をこぼすので、#本日のおこぼし とか #本日のお飛ばし とかツイートしていたら、それを楽しみにする人が出てきたりして、本当にTwitterって楽しいなと。「服が心配なので」というお手紙つきで染み抜きを送ってくださったフォロワーさんもいました。

失敗したら会社に報告するより先にツイートしているくらい、何も隠していないです。Twitterのアカウントを作ってから本格的に始めるまでは自分の顔写真をアイコンにしていたのですが、ちゃんと運用を始めてからは他の企業アカウントを観察して、「企業はアカウント名の後に【公式】と書くんやな」とか、「どうやらこんな顔だしてるやつおらんぞ」ということに気づいて、中の人の謎めいたイメージに憧れてアイコンをロゴに変えました。

でもテレビの取材や新聞の取材などを受けると、フォロワーさんが画像つきでツイートしてくれて、思いっきり顔バレしているので謎めいた感じはもう諦めました(笑)

 

 

 
- 代表に就任直後に火災の被害に遭われたと聞きました

2021年の8月末に代表取締役になったのですが、1ヶ月ちょっと経った10月9日に、火災で会社があり、事務所・作業場・倉庫と全焼しました。そのときのツイートがそれまでで一番反応がありました。

この火災で工場だけは助かり、50年来使っている機械も無事だったので今も事業が継続できています。やっと今8ヶ月くらいが経ち、ようやく落ち着いてきたところです。(2022年7月現在)

ただこれも、Twitterをやっていてよかったと思う瞬間でした。それまでにさまざまな企業の公式さんとの交流や、コラボをしてきたつながりで、会社の商品や中の人が個人として支援物資を送ってくださったり、お見舞いのツイートをしていただいたり、#がんばれ菊水産業 と言うハッシュタグも生まれ、たくさんのフォロワーさんの支援に支えられました。幸い負傷者が出なかったので火災自体はニュースになりませんでしたが、公式さんのツイートがまとめサイトで記事になりました。

取引で支援したいと言ってくださる企業さんもあり、商品を卸させてもらうきっかけにもなりました。Twitterをやっていなくて火事になるのとTwitterをやっていて火事になるのとでは全然違っただろうなと思います。

フォロワーさんからの支援物資も大量に届いて、本当にありがたかったです。

クラウドファンディングも当初は予定していませんでしたが、フォロワーさんから「支援したいからクラファンしてほしい」とDMやリプライをたくさんいただき、それでも迷っていると終いには「クラファンできないなら銀行口座書いてくれ」と言ってくださる方までいらっしゃり、銀行口座をツイートするのはさすがに気が引けたのでクラファンに挑戦することにしました。

工場の機械自体は助かりましたが、外壁が焦げたり水を被った内装はかなり修復が必要な状態で、実際のところ、加入していた火災保険では100%賄えない状況でした。手探りで始めたクラファンは目標金額を300万円に設定しましたが、これもTwitterで多くの方に拡散いただいたおかげで、最終的には約1,200万円で着地しました。

「リターンが届きました」というフォロワーさんのツイートを見て「この人もあの人も参加してくれはったんや」と・・・それまで1年間Twitterをやってきてよかったと思いました。基盤があったからこその結果だったと思います。

 

自分が楽しい、自分がおもしろいと思うこと、地場産業や日本のモノづくりのこと、みんなにもっと知ってもらいたいという気持ちでやっています

 
- 日頃のツイートやフォロワーさんとのコミュニケーションで工夫されていることはありますか

キャンペーン時や体調が悪い時、多忙すぎる時は難しいですが、フォロワーさんからのリプライには毎日何時になっても必ず全部返すをモットーにしています。

企業アカウントというよりも私の個人アカウントみたいになっていますが、自分が楽しい、自分がおもしろいと思うこと、地場産業や日本のモノづくりのこと、みんなにもっと知ってもらいたいという気持ちでやっています。もう脳みそが、毎日の生活の中でツイートできそうなおもしろネタを探す仕組みになっていると思います。

あとは「つまようじのつま子ちゃん」というキャラクターをたまに登場させています。

最初は私がらくがきで描いていた絵ですが「昔こんなん描いてん」とツイートしたら「かわいい」と言ってもらえ、「そうか、これええんか」となってキャラクターになりました。

失敗の多いお菊さん(私)の保護者という位置付けで、お菊さんを見守り、愚痴るという設定です。Twitterは2分20秒までの動画を上げられるので、たまに動画で小話をしゃべる #動くつま子 #喋るつま子 が登場します。公式ウェブサイトに載せるようなものでもないこんなことは、Twitterだからこそできることですよね。

 

一般的な形の国産つまようじを作っている会社がもう全国に2社しかなくて、日本のものづくりが消えかけています。日本の職人さんも後継者がおらず廃業するところも少なくありません。

そういう現状を少しでも知ってもらうきっかけづくりが必要で、固いことばかり言っていても興味は持ってもらいづらいですからね。つま子ちゃんにはそういう役割もあります。おかげさまでつま子待ちをしてくださるフォロワーさんもいらっしゃるし、つま子ちゃんがいたから、クラファンのリターン商品のつま子グッズも作ることができました。

火災があってから忙しくてキャンペーンなどもできなかったのですが、まわりの公式さんが応援キャンペーンをしてくれたり、勝手につま子グッズを作って、勝手にキャンペーンをやってくれていました(笑)

「どれがいい?」って聞くと「あんなのがいい」「こうしたらどうですか?」とたくさん意見をいただける。普段のビジネスでは絶対にできないことだと思います

 
- ビジネスの発信にTwitterを使っていてよかったと実感したことはありますか

商品を作るときのマーケティングができることですね。

Twitterから生まれた商品、フォロワーさんと一緒に作った商品があります。「どれがいい?」って聞くと「あんなのがいい」「こうしたらどうですか?」とたくさん意見をいただける。普段のビジネスでは絶対にできないことだと思います。

Twitterにはお世話してくれるフォロワーさんがたくさんいるんですよ。ある商品を作るための素材を探していたときに、「こんな技術ないかな」とか「これやってくれる企業さんいるかな」とツイートしたら、いろんな人が教えてくれて、無事見つけることができました。

一般消費者向けに販売を始めたときは、それまでBtoBだと目にすることがなかった、消費者さんが商品を使っている様子や、手にとっての意見を聞くことができてものすごく感動しました。わざわざツイートしてくれる方もいらっしゃり、そういうことがそれまではなかったのでありがたかったです。

またBtoBのお客様から「Twitterみたよ」と連絡をいただいて、お仕事につながったこともあります。

 
- 参考にされているアカウントはありますか

参考にしているとはまた別かもしれませんが、マクセルさんにはTwitterのイロハを教えていただきました。フォロワー数が100人にも満たないころに「コラボしませんか」とお声がけくださり、マクセルさんが非接触充電器を出されたタイミングだったので、非接触つながりでキャンペーンをしてくださいました。

マクセルさんのおかげで菊水産業のアカウントをたくさんの方に知っていただく始めのきっかけとなりました。中の人がめちゃくちゃいい人で、今でも神様って呼んでいます。

公式の間でこういう文化があるのがいいですね。自分のアカウントでフォロワーさんが増えてきたら、他のアカウントを引き上げる存在になろうという、公式同士で助け合いの仕組みができていると感じます。

私も「お節介キャンペーン」を何回かやったりしています。

 

- 他の企業に1つだけTwitter運用に関するアドバイスができるとしたら

会社が大きければ大きいほど、数字を求められたり、「それがどうビジネスに結びつくんや?」と上司に言われると思います。実は弊社の社員も始めは「それやって何になるん?」と思ってたと最近告白されました。私は立場的に「何かわからんけどなんとかなるねん!」と言いながらやってきましたが、実際続けていると何かしらの成果や形になっていくものだと思います。会社の上層部の方には、フォロワー数にはこだわらず「Twitter担当者にはある程度自分の判断でやらせてあげて」と伝えたいですね。

Twitterを日々運用していると、ふとしたことで会社を思い出してもらうきっかけになったり、何気ないツイートが話題になりメディアに取り上げてもらうきっかけになったりすると思います。

でも、何より自分が楽しんで発信することが大切で、そうすることによって突破口が見えてくると思います。

- ありがとうございました

 

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