検索して確かめたくなる 「Xで誰も言っていないこと」 をアイディアのコアに

左) 電通東日本 冨田孝行氏 (プランナー) | 右) 電通東日本 松田脩氏(クリエイティブディレクター)

Xでの商品の検索結果が対前月80倍 喫食意欲を上げるアイディアとは

◉ 竹下 洋平(X)
栗山米菓さんからみなさんへのオリエン内容はどういったものでしたか?
◉ 松田 脩氏 (以下、敬称略)
認知度が低い 「瀬戸しお」 の喫食意欲を促す企画のプランニングをという依頼でした。 栗山大河社長 (当時は専務取締役) と弊社営業との間で 「ばかうけもいいけど、 瀬戸しおもおいしいですよね」 という会話があって。 好きな人は大好きだけど、 知らない人は全く知らないこの 「瀬戸しお」 の美味しさをもっと世の中ごとにさせるのがいいと思ったのが最初です。
◉ 竹下 洋平(X)
その結果、 商品の検索数が前月の80倍、 会話も2023年1年分の会話をこのキャンペーン1回で生み出した本企画。 「瀬戸しお」 を話題にしてもらうというところでは十分達成されたのではないかと思うのですが、 栗山米菓さんとの間で今回の効果をお話しされていますか?
◉ 冨田 孝行氏 (以下、敬称略)
喫食意欲については、 調査結果でもご満足いただけるような数値が出ています。あと認知度も明らかにキャンペーン前より数値が上がっていました。
◉ 中川 百合(X)
広告活動は一般的に、 まず全体予算がこれくらい、 で、 制作費やメディア費にアロケーションされて、 最後にデジタル予算はこれぐらい、 で、 最後にXの予算、 というケースが多いのではないかと思います。 今回、 例えば 「SNS企画を」 とか 「OOH企画を」 とか、 具体的なメディアのご要望は栗山米菓さんから最初にあったんですか?
◉ 松田
栗山米菓さんからは、 PR性の高いコミュニケーションを考えてくださいということで、 特に 「デジタルで」 とか、 そういった指定はなかったです。
◉ 冨田
ただ、 最近は、 プランニングの最初にまずXで調べることから始める。 マーケットでのポジションを把握するということがとても多いので、 それでいくとXはプランニングの一番最初からもう登場していましたね。
◉ 松田
Xで商品名を入れたり、「高度な検索」を使ったりして見ていくと、「なるほど、こういうことでみんな反応してるんだな」とか発見がある。例えば、キャラクターとのコラボレーション企画は比較的Xでの反応がいいけど、それと同じことを栗山米菓さんにご提案しても、「ただのコンテンツコラボじゃん」という印象になってしまうし、こちらもアイディアで勝負しなきゃいけないなっていうのはあったかなと思います
◉ 冨田
「瀬戸しお」 で見ていると、 例えば食べ終わった包装ゴミの写真だけXにアップされてる(笑)。 その写真だけで 「食べすぎた」っていうことを言ってるわけです。 Xってホント、 よくも悪くもハードルが低いですよね。 ありのままが見れるっていうのが一番ですし、 例えば賛否がある話題があったとして、 他のSNSと比べても、 ちゃんと 「否」 の方も見れるのがXのユニークさ。
◉ 松田
「賛」 だけじゃなくて 「否」 の方も見ていたりすると、 これをやると反感を買ってしまうとか、 やったらだめだなみたいな感覚もわかってくる。
左) X Corp. Japan 中川百合 (Nextチーム)、 中) 電通東日本 冨田孝行氏 (プランナー)、 右) 電通東日本 松田脩氏(クリエイティブディレクター)

ロケハンして考え抜ぬいた OOHが持つセレンディピティをXと同期

◉ 竹下(X)
プランニング工程とは別に、 具体的に表に出るクリエイティブ表現としてXが採用されたのはどんな経緯ですか?
◉ 松田
Xのユーザーポスト使った広告クリエイティブ自体は、 これまでにもあるし、 新しさは我々もそんなに感じてなくて。 ただ、 表現として、 我々のようないわゆるコピーライターが書く文章じゃない、 ユーザーが書いた文章を使うというのは面白いと思っていました。 確かに 「まずいの検索結果はありません」 の方は、 ちょっと新しいかなと思いますけど。
◉ 竹下(X)
OOHとXのポストを掛け合わせたクリエイティブアイディアについてはいかがですか?
◉ 冨田
X社さんから以前、 OOH Amplifyパッケージ (*1) のご紹介をいただいて、 もともと予備知識としてあったのはすごく大きかった。
◉ 松田
そういえばそれあったよね、 LIVEBOARDでやるのいいじゃん、 やってみよう、 という話になった。
◉ 中川(X)
LIVEBOARD用にあり物の素材をリサイズしただけではなくて、 LIVEBOARDをX企画の見せ場として、 クリエイティブの方の手がきちんと入っていたことも、 この企画の大成功に繋がったと思っています。
◉ 松田
LIVEBOARDの掲出現場を実際にロケハンして、普通だったらありもののCM素材を流すとか静止画にするとかになるかもしれないんですけど、 あの環境で通る人に音声なしで認識してもらうには動画をどう編集をしようか? とかいろいろ考えましたね。OOHも全部見て回れないけど、 まあ、 行ける範囲ではロケハンしました。
◉ 中川(X)
「瀬戸しお」 のおせんべい物撮りの上に、 ポストが鎮座している。 あの巨大なおせんべいクリエイティブとポストの組み合わせは効いてましたよね。

◉ 竹下(X)
結果的にそのOOHが写真に撮られてXで拡散して、 さながら、 “リアルな環境で引用ポスト” してるみたいですよね。

◉ 中川(X)
OOH広告を撮ってXにポストするって、ローカルなラーメン屋さんの面白い張り紙を見かけてポストする感覚、あれと横並びで企業のOOH広告がいる感じがします。 広告っていうより面白いものを見つけて写真に撮るのと同じで、広告へのハードルがちょっと下がってる感じがしますよね。

◉ 冨田
それ、 広告じゃない感じが重要なのかなと思って。 OOHって自分が出会ったっていうセレンディピティというか、 偶発的な出会いに対して投稿したくなるんだと思うんですよね。

 

「まずいって検索するなんて、 すごく性格が悪いですね」

◉ 中川(X)
以前からクリエイティブの皆さんに気軽にご相談いただけるような取り組みは続けていたので、 この企画もカジュアルに 「ちょっと話しません?」 ってお声がけいただきましたよね。 最初は 「XとOOHの掛け合わせ企画で...」 だけ伺っていたけど、 蓋を開けてみたら、 「まずいって検索したらなかったんですけど、 面白くないですか?」 って、 いやいやそれ面白すぎじゃない? って(笑)。 すでにお2人の中でアイディアがあって、 それを一緒に確かめ算する感じでしたね。
◉ 冨田
より広げるためには? とか、 Xっぽくするには? みたいなことでしたね。
◉ 中川(X)
あの時聞けなかったことがあるんです。 私たちにご相談いただいた時って、 「今回の提案はこの方向で行こう」 って御社内で進んでいたタイミングだったんですか? それとも、 まず始めに、 お2人でブレストしたことを私たちにシェアくださったんですか?
◉ 冨田
営業や社内のチームに話すより全然前ですね。 アイディアを思いついた次の日ぐらいには中川さんに話してます。 「まずいって検索するなんて、 すごく性格が悪いですね」 って言ってましたよね(笑)。
◉ 中川(X)
褒め言葉ですよ(笑)。 私たちはどうしてもX上にすでに表層化しているものから推察したりとか、 仮説を立てたりとかすることが多いんです。 だから、 「ないもの」 を思いついて見つけてくるというのは、 これはもうクリエイティブのプロじゃないと出てこないなって感じました。
◉ 冨田
クライアントにも提案した時も 「X社の方が笑ってました」 って言ったら、 なるほどX社の方にとっても新しいアイディアなんですね、 ってスムーズに受け入れてもらえました。
◉ 竹下(X)
そうは言っても 「まずい」 って、 食品会社である栗山米菓さんとってはちょっと刺激の強い言葉ですし、 気を使われたことなどありますか?
◉ 冨田
まぁ食品の広告で 「まずい」 ってワードを使うのは、 わりとセンセーショナルですよね。 ただ、 嘘がないことって今とても大事だと思うんです。 消費者も、 今、 すごく目が肥えていて、 リテラシーが高い方が多い中で、 美味しいシズル表現はもうありふれている。 美味しいって言うと、 もはや少しちょっと嘘っぽく見えてしまうくらい。
◉ 松田
企業の広告って、 ちょっと信用されないものになってしまいますよね。 だったら、 企業の感情がちょっと出るほうがいいよなって。ちょっと 「しらこい」 感じ(笑)。
◉ 冨田
「調べてみたんですけど、 どうやら美味しいらしいんですよ」 って、 自信あるんだかないんだかっていう(笑)。

広告賞の裏にXあり TCC賞の変化と海外からの評価での手応え

東京コピーライターズクラブ(TCC) @tcc_jp https://x.com/tcc_jp/status/1930919705042387393
◉ 中川(X)
TCC賞受賞、 おめでとうございます! 今日はもう一つお伺いしたかったのは、 広告賞のことです。 今年のTCC賞を見ながら勝手に 「TCC賞の裏にXあり」 と思っていました。 受賞したコピーの中には、Xで話題になったものもたくさんありますよね。Xが広告コピーの表現に影響していたり、 Xの存在によりコピーライターの力の入るところが変わってきていたりしますか?
◉ 松田
変わってきてますね。 今回この 「瀬戸しお」 はXの検索結果の定型句を使ったこともアイディア、 それをコピーと言えるのかというのもあるんですけど、 TCCがコピーと認めたのなら、 新しすぎますよね(笑)。 審査委員長の方がラジオで言ってましたけど、「突然目に飛び込んできた」 って。 数ある候補コピーの中であの広告コピーが目に飛び込んできた、 と。
◉ 中川(X)
切り取った視点そのものがもちろんクリエイティブなので、 その時点でコピーとして成立していると思いますけどね。
◉ 松田
それを評価されたのなら、 世の中のコピーを見る目が変わってきたのかなって思います。 
◉ 中川(X)
Adfest Asiaも受賞おめでとうございます!昨年末、 日本のXの魅力を紹介する海外のイベントでこの 「瀬戸しお」 も日本からの好事例のひとつとして紹介したのですが、「え! おせんべいでしょう? おせんべいについてここまで熱烈にポストするの?」 って日本人のXの独特な感性にノンジャパニーズのマーケターもみな大ウケ。 日本のX民のインサイトと 「どうやらうまいらしい」 のクリエイティブの面白さが伝わったという手応えを感じました。 そして、 Adfest Asia受賞により、 ハイコンテクストだと言われる日本のX事例が、 こうして言語を超えてローコンテクストになっても海外で評価されて、 我が事のように嬉しかったです。
◉ 松田
海外の広告賞には実は全く興味なかったんですけど、 「どうやらうまいらしい」 を 「Apparently Yummy」 と表現された中川さんのプレゼンを観たうちの林慈郎局長が、 「あれ、海外賞もいけるんじゃない?」 って。
◉ 中川(X)
えっ、 そうなんですか、 もしかして私のおかげですか!
◉ 冨田
それまで僕らも海外の方々の反応を聞く機会がなかったので、 中川さんのプレゼンでご紹介いただかなかったらAdfestへの応募もブロンズ受賞もなかったです(笑)。
(構成・文/中川百合)

注釈:(*1) Amplify Sponcership Package: ブランドがプレミアムな動画コンテンツパートナーと連携し、 ターゲットオーディエンスに効果的にリーチできるX広告のソリューションメニューのひとつです。

《 プロフィール 》

松田 脩 (まつだ おさむ)
株式会社電通東日本 クリエイティブ・ディレクター、 コピーライター、 CMプランナー。得意分野は常識を逆手にとった絶妙なラインのクリエイティヴ。戦略コピー、 デザイン、 演出まで、 広い視点でディレクションを行う。
受賞: 
CREATOR OF THE YEAR メダリスト、 TCC賞、 TCC新人賞、 OCC新人賞、 FCC最高賞、 CCN賞、 新聞広告賞、 日経広告賞、 BtoB広告賞、 JAA広告賞、 広島広告賞、 静岡CMグランプリ、 ADFEST MEDIA LOTUSBRONZE、 他。
冨田 孝行 (とみた たかゆき)
株式会社電通東日本 クリエイティブプランナー、 PRプランナー。 食品、 飲料、 製菓、 流通などの一般企業から官公庁まで、 多分野な業種のクリエイティブ、 PR、 アクティベーションを統合的にプランニング。
受賞: 
ADFESTGOLD&SILVER&BRONZE、 広告電通賞GOLD、 ACC賞BRONZE、 TCC賞、 FCC賞、 CCN賞、 新聞広告賞、 JAA広告賞 など。
竹下 洋平 (たけした ようへい)
X Corp. Japan - Head of Marketing
日本地域においてのXのマーケティング全般を統括。 2009年から2014年まで広告代理店マッキャンエリクソンにてデジタルプラニング、 コミュニケーションプランニングを担当。 2014年にTwitter Japan (現X Corp. Japan)入社後、 広告営業、 リサーチマネージャーとして多岐にわたる業種の業務を担当し現在に至る。 ワインと家電に関する資格保有者。
中川 百合 (なかがわ ゆり)

X Corp. Japan - Senior Brand Strategist / Agency Collaboration Head, Next

外資系広告代理店とニュースメディアで研鑽を積み、 2018年にTwitter Japan (現X Corp. Japan) へ。 多様な広告主へのクリエイティブ戦略の支援を担当し、 2020年より広告会社のクリエイティブやプランニング職へのX活用推進アドバイザーとして活動中。 家では掃除、洗濯、渉外担当、 育児も4年目。 Xも本も読む専。

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